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方位・羅針盤アンソロジー『廻る針の一夕語り』 を読みました

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方位・羅針盤アンソロジー『廻る針の一夕語り』(主宰:象印社・くまっこさま) の感想です。

Twitterで流したものをまとめ・ちょこっと加筆・修正しました。

あらすじなどは主宰者さまが作成した特設サイトがありますのでこちらでご覧ください。

 

 

■ 掲載作品感想 ■

 

● 春萌す方/恣意 セシルさま

凄く素敵なファンタジーで大変美味しく読みました。最初の何行かで続きが読みたい!気になる!と思わされたお話しは本当に久しぶり。雰囲気としては海外の児童文学を日本人向けにしたような感じがして仲良くなりやすかったです。冬の終わりに読みたいお話。

 

● 魔女の遺品/猫春さ

するするするっと読めてしまうちょっとミステリーも交えた現代ファンタジー。うたがとても良かったです。ラストの盛り上がりはもう少しほしかった気がしました。

 

● 北海道中エルボーバイシクル/マンノンさ

コミカルな冒険モノ(?)で面白かったです! ところどころに入る雑学がとても良い味を出していたと思います。北極まで行ったら方位磁針の針はどこを指すのかが大変気になって仕方ないのでググらせていただきました←

 

● 彗星旅団/伊織さ

本当に必要な言葉だけを丁寧に敷き詰めたかのような文章で、書かれていない部分への想像がすごく広がる物語だと思います。とても好きです。この方が書いた別のお話が読んでみたいです。

 

● 明るいところで光る星/日野 裕太郎さ

世界という大きい枠組みの中で人がいかに足掻いてもどうしようもない、そんな諦めと微かな希望が同居した物語。話全体を包むとても寂しいのにあたたかい空気感が何とも味わい深いです。何度か読むともっと味が染み出してきそうな気がします。おすすめです。

 

● 魔女の祝福と人の王/相沢 ナナコさ

短い中に伏線がたくさんあった気がしました。蝶々のエピソードとそこからくる祝福が凄く切なかった。そこだけで胸いっぱいお腹いっぱいになりました。

 

● ケントと星のコンパス/R・H・恵賭さ

子ども向けの絵本にしてみたいと思うようなあったかい尽くしのお話。 見返りを求めずに誰かを助けると自然と良い事が起こったり、奇跡が起こったりするというのがお話全体にあって、すごくいいなぁと思いました。

 

● 鈴の音の響くところ/くまっこさ

丁寧作り込まれた独特な世界観はファンタジックなのに描写がリアルですごく惹き込まれました。小野不由美さんの『十二国記』を思い出します。最後がどどどどどどって終わってしまった感じがしたのがちょっと残念でした。長編でがっつり読んでみたいです。

 

● 止まない風/まりもさ

それぞれのエピソードを重ねながら最後に爆発→消火という構成が素晴らしいです(爆発→消火の過程はもうちょっと葛藤あっても良かったのでは?と思いましたが)。それ以上に最後の締め方が凄くイイ! 好き。とにかく素敵な話なのでおすすめいたします。

 

● 彼女の右手/久地 加夜子さ

ジャンルとしてはホラー&ミステリー? 主人公の感情が伝わってくる良い作品でした。方位磁針のアイデアも好きです。怖いモノが苦手な人はちょっとキツい描写があるかも? 物語の続きを強調する描写が多いのがちょっと気になりました。

 

● 時計さん/高村 暦さ

3回読んでようやくストーリーを正確に理解した、と思います。言葉の一つひとつに気持ちが込められているような文章で、登場人物一人ひとりの気持ちが切実に伝わってきます。書き手さんのこの話への愛情と読者への信頼が感じられる作品に思えました。おすすめです。

 

● ネヴァーランドのわたしたち/あずみさ 

最初登場人物がよくわからなくて混乱しましたが、そんなのどうでもいいぐらいとても魅力のある作品です。今回のアンソロジーの中で一番好きな作品です。菅浩江さんの『ブルーフライト』を思い出しました。

 

● 南の空の、冬の三ツ星/みやの はるかさ

人と人を繋ぐものは明確ではなく、ちょっとしたことでその人を思い出したり、記憶に残っていることに驚いたりします。そんな人と人との繋がりを感じさせるお話。

 

● 指針と羅針/泉 由良さ

このアンソロジー唯一の連詩。「ソウビ」は最後の言葉でそこまでの詩がすべてキラキラと輝くようなかわいい詩でした。「指針と羅針」はこのアンソロジーにふさわしい決めセリフ的な最後でかっこよかったです。

 

個別の作品についてはそんな感じでした。あと表紙や中面とかも素敵だったのでそちらについても触れさせていただきます。

 

● 表紙

かわいらしさとレトロな感じが同居してるすごく素敵なイラスト。ロゴもおしゃれです。何よりルビをふってある心配りがにくいです。背表紙にタイトルがほしい!と本棚に入れたときに思いました。

 

● 中面レイアウト

特に上下の余白のバランスがとてもよくてすごく読みやすいレイアウトでした。各作品扉は薄いベタがあってぱらぱらっ、とめくったとき扉がわかりやすいです。ただそのせいでタイトルの飾り(ここにも小さい方位磁針がいますよ!)が埋もれがちなのがもったいなかったです。

 

 

最後に、今回私がこのアンソロジーに参加した経緯ですが、主宰のくまっこさまが以前発行された図書館・図書室アンソロジー『書架にねむる。』がとても素敵なご本でしたので、それで参加してみたいと思いました。シタゴコロとしては、参加すると無料で本がいただけるっていうのがありました←

期待に違わないというかむしろそれを上回るレベルの素敵なご本で、正直くまっこさまに作ってもらえる本は愛情たっぷりで羨ましいなぁと思いましたし、自分もこういう本作りがしたいなぁと思いました。

あと、このアンソロジーに参加された方をTwitterでちょこちょこフォローしたり、140字感想をお気に入りに入れていただいたりとかが縁で交流させていただけて嬉しかったです。今まで知らなかった作家さんを知るきっかけにもなりました。

参加者さんの感想が読めたのも嬉しかったし、自分とは違う見方をしていたりして面白かったです。作品は書いた作者さのものでもあるけど、読者さのものでもあるなぁと改めて思いました。

ということで主催のくまっこさまへの感謝と御礼とを込めつつ、この本ができるだけたくさんの方に読んでもらえたらなーと思います。

購入とかはこちらです。

 

とっても長かったので読んでくれた方はお疲れさまでしたー。