Twitter300字ssで書いた掌編です。
お題:時
ジャンル:オリジナル、ファンタジー、魔法
■ 時魔導士 ■
あるところに時魔導士がいた。その名の通り時間を操る魔法使いだ。
あるとき、時魔導士の元へ「娘の時間を止めてほしい」という夫婦がやってきた。娘は不治の病で、現在の医学でも魔法学でも治すことはできないという。それでも、何十年か何百年か先の未来、いつか治療法が見つかるかもしれない、と。
ある日、一人の少女が時魔導士の元を訪れた。不治の病にかかっていた娘だ。
時間を元に戻してくれ、と彼女は言った。
両親は死に、恋人も友人もなく、自分を知る人は病院の医者と看護婦だけになってしまった、それでもこの病気の治療法は見つからない、もう生きていたくない、と彼女は涙ながらに語った。
あれから156年もの年月が過ぎていたのだ。