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7's Library

小説書いたり本作ったり短歌詠んだり感想呟いたり

空想のまちアンソロジー『ぼくたちのみたそらはきっとつながっている』を読みました

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空想のまちアンソロジー『ぼくたちのみたそらはきっとつながっている』(主宰:象印社・くまっこさま) の感想です。 Twitterで流した個々の感想をまとめて加筆修正し、全体感想とか追加したものです。  

※感想には簡単なあらすじも付けています。なるべくネタバレしないよう心がけてはいますが、少しでも嫌という方はブラウザを閉じることを推奨いたします。

 

空想のまちアンソロジーは、「世界は幾つもの《まち》でできている」という設定を共有し、参加者それぞれが独自の《まち》を想像してお話しを書いた、シェアワールド的なアンソロジー。

個々の《まち》とそこで暮らす人々の魅力的で個性溢れる物語14作品が楽しめます。

 

 

■ 掲載作品感想 ■

 

● 楢の薫り、楓の音/まりもさま

死んだ父の跡を継ぎ、音町でただ一人、酒町の人のための楽器職人として生きる女性エレンの生涯を描いた話。さまざまな問題に直面するたび、女性として、職人として、迷いながらもひたすら自分の心に素直に生きようとするエレンの姿がじん、と深く胸に響く感動作! 読み終わるとタイトルの意味もわかって心に染み入る深い深い物語でした。

 

● 蛍町の祭日/青波零也さま

ランプ職人の少年コウと、町の象徴である次代の蛍火の巫女ミツ。蛍火の巫女の代替わりが行われる蛍火祭の前日、二人は出会うーー王道的なボーイ・ミーツ・ガール。蛍のランプや町の描写が凄く愛情に溢れていて、それが二人の心情にごく自然に繋がっていくラストが素晴らしかったです。

 

箪笥町/南野風文太さま

腕利きの箪笥職人を父に持つ少年・玉樟は、弟子入りの日、初めて町と箪笥職人の秘密を教えられるーー。江戸時代ぐらい?と思われる日本の雰囲気が漂う箪笥町の生活や伝統が、丁寧に、情緒豊かに描かれた物語。幼い頃の心情と箪笥職人として独り立ちしたあとの心情から、玉樟の成長が感じられると同時に、その間の物語に想像が広がりました。

 

● 砂町/マンノンさま

砂漠が広がる砂町のオアシスで、砂漠を通る配達人を相手にレストランを営む兄弟のお話。砂漠のレストランの一日が、テンポ良くコミカルに描かれています。読んでいると自然とひといきついてしまい、肩の力が抜けていく緩やかさが魅力的。そしてコーヒーが美味しそう!

 

● 始まりを見に行こう/巫夏希さま

永遠に朝が訪れない夜町。孤児の少年少女たちは、“始まり”を見るため、危険を承知で旅立っていく。全体的にダークな雰囲気が漂うのに、どこか希望を感じさせる物語。最後の一文が謎めいて後を引きます。

 

● いつか、かえる/世津路章さま

星の光で作物を育てる星町。そこに空から落ちてきた竜の卵。やがて卵から孵った竜が、星守り人のまいや町の人たちと共に生き、かえるお話。竜の一人称・僕の視点で紡がれる物語は、やわらかくかわいらしく、そっと心に寄り添ってきます。卵の中から伺っていた世界、卵から孵った後の世界、いろんな世界と触れて成長していく僕の姿に、愛おしさがあふれてたまらない気持ちになります。

 

● DeepWater/久地加夜子さま

ほぼ1年中雨が降り続く雨町。少しずつ変わっていく町と人々の姿を、年に一度町を訪れる運び屋の青年の視点から描いた物語。しっとりとした町の描写や、少女から女へと徐々に成長していく町長の娘の姿など、どこか退廃的にも感じられる美しさが魅力的。町とそこに住む人々は、どうあっても分かれ難く結びついているのだと、物語全体で示しているように感じられて、良い意味でぞっとするお話でした。

 

● 星は叶えてくれない/青山凪紗さま

天体観測に適した、高級観光地・星見町。数年前町にやってきた旅人に感化され、少年は外の世界に感心を寄せていくーー。思春期の少年らしい感情が丁寧に描かれた作品。最後にあかされる秘密が興味深いです。

 

● 旅の始まり/猫春さま

切り立った崖に位置する宙町で、東西を行き来するための荷役飛行士のエンジンを設計するエンジニアの女性が、自分自身の目標を見つけて生きていくまでのお話。ある事故をきっかけに自身の目標を見出だし、前向きに、何度でも諦めずに目標を持って生きていこうとする姿が輝かしいです。

 

● 町長選挙/わたりさえこさま

温泉が豊富に湧き出る湯町。そこで自治会長を務める富澤さんと銭湯を営む福さんが、町長選挙の問題から町や自身の現状について語り合います。若者でも老人でもない、微妙な年齢の男性2人の会話が、年齢はもちろん、それぞれの性格をよくあらわしつつ、テンポよく描かれていて楽しかったです。ただ同時に、その年齢だからこその悲哀も感じられて切なくなりました。

 

刻刻と/日野裕太郎さま

人生の節目節目に入れ墨を彫る慣わしのある墨町で、彫り師を志しながらもなかなか一人前になれない少女・寧子の葛藤と成長の物語。寧子の葛藤と成長が、淡々と、それでいてリアルに描かれています。全体的にネガティブ思考な主人公に思えましたが、不思議と前向きな気持ちになれるお話でした。

 

● 幡町/宇佐卯楽々さま

今はなくなってしまった幡町。もうすぐ父になる男性は、かつての幡町の思い出を胸に雪町を訪れるーー。男性の思い出と現在がリンクしていく過程が詩的な言葉で紡がれていてとても魅力的でした。この本の中で一番の掌編ですが、短い文章の中にぎゅっと凝縮された物語は、とても美しく儚い夢のようでありながら現実へと戻ってくる力強さがあるように思えました。

 

● 世界地図/くまっこさま

土地の測量や地図の生成を主な仕事とする地理院を要する地理町。そこで一人世界地図を作り続けている少年サニアのお話。亡くなった先生との思い出と現在が交錯しながら進んでいく物語からは、サニアと先生の優しくあたたかい絆が感じられました。また、お話の随所にこれまでに登場した町の名前やストーリーがそっと散りばめられていたこと、そしてラストの展開ーーこの本の最後にぴったりのお話でした。

 

ということで個々の感想でした。1作足りないのは自作品『本の町の見習い司書さん』。本を愛する人々の町「本町」で、“見習い司書”の女の子が、本当の司書になるまでの1週間とちょっとのハートフルストーリー(?)です(たぶん)

 

全部のお話を読んで感じたのは、いろんなまちの在り方、人の生き方・繋がりがあって、それは決して“空想”の中だけじゃなく、今を生きる私たちにも通じるものがあるんだな、と。“まち”を書くというアンソロジーの性質?がそういうものを浮き彫りにさせているのが面白かったです。

私はこういうアンソロジー系の本を読むとだいたい一番好きな作品があるんですけど、今回は本当にどの作品もそれぞれの魅力が拮抗している感じで、どれが一番好きとかつけられませんでした。ただ、久地加夜子さまの「DeepWater」は凄かったです。アンソロジーの世界観を本当に考え抜いた末の設定というか、そういう繋がりもあるのだな、と考えさせられる作品でした。いつか地球もそうなっちゃうのかなーとか←

 

そしてこのアンソロジー、内容の充実さもさることながら、装丁もとっても可愛らしく、さらに手作りのブックケースとしおりも付いています。私はしおりを使いながら前から順番に一つずつ物語を読んでいって、最後にブックケースにしまったのですが、宝物みたいで、本当に凄く大事にしたいと思える本だなぁ〜と思いました。

 

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それではとっても長い感想文を読んでくれた方、ありがとう&お疲れさまでしたー。