Twitter300字ssで書いた掌編です。
お題:願い
ジャンル:オリジナル、お伽噺風、暗め
■ 願いの万華鏡 ■
夫がくれた筒状のそれは、万華鏡というそうです。
中を覗けば信じられないような美しき世界。
この万華鏡を覗きながら口にした願いは何でも叶うらしい、そう言って、夫は出稼ぎへゆきました。帰ってくるのは月に一度か二度、けれどいつだって土産片手に帰ってきてくれます。
わたくしは野良仕事をしながら、たまに万華鏡の中をうっとりと見つめ、帰ってこない夫のことを思い、日々を過ごしました。
そんなある日、万華鏡を覗きながら、夫の言葉を思い出したのです。
「……夫が早う帰ってきますように」
万華鏡の中が一瞬光ったかと思った次の瞬間、私は見知らぬ世界へおりました。
そして、目の前には夫の首。
あぁ、貴方、お帰りなさい。
※ 同世界観作品 ※