超短篇・500文字の心臓に初参加させていただきました。概要は以下、公式サイトの「サイトについて」より引用させていただきました。
■独特の読後感を持ったとても短い小説を超短篇と言います。「500文字の心臓」は、その超短篇を使った競作を楽しんで頂く為の競作サイトです。
■当サイトは文字数が500文字以内の文章作品を主に扱い、各回のタイトルに沿った超短篇を俳句でいう句会で用いられる「互選」という方法で得点を付けていく「タイトル競作」の作品を募集しています。
今回の競作タイトルは「タルタルソース」。作品の投稿と選評、両方とも参加させていただきました。
↑チキン南蛮とタルタルソースを久しぶりに作ったのですが作品には何一ついかされませんでしたのでブログ記事に写真だけ
■ 参加作品 ■
むかしむかし、空の向こうからタルタル人がやってきた。彼らは人間と同じような姿かたちをしていたが、人間にはない、やわらかなからだを持っていた。からだのどの部分もどこまでも伸び、どこまでも曲がった。
タルタル人たちは、友好の証として、自らのからだを切り裂いた。人間たちは驚いたが、タルタル人は痛がる様子もなく、流れ落ちてくるほんのり黄色みがかった白い液体を、見たことのない透明な器に入れた。タルタル人は言った。「わたしたちのからだはとてもおいしい。ぜひ食べてみてください」と。人間たちは気味悪がったが、ひとりのおなかをすかせた子どもがその液体を舐めた。子どもは叫んだ。「おいしい!」と。人間たちは顔を見合わせ、それからおそるおそるその液体を舐め始めた。液体は、今まで食べたどんなものとも似ても似つかない味わいで、彼らはあっという間にその液体を舐め尽くした。そして、その様子を黙って見ていたタルタル人たちに襲いかかった。
かくして、タルタル人たちは消えてしまった。タルタル人を食べた人間たちも消えてしまった。タルタル人の味を再現して作ったというソースだけが残されている。
■ 選評 ■
皆同じタイトルのため、番号と、最初の一文を入れています。著者は選評後にあかされます。
選評、超!超!とっても!!難しかった!!! 正直どれも面白く読みました。内容としての面白さだけだったらかなり困ったんですけど、「タルタルソース」というタイトルにぴったりか?というのと、単純な好みで最終的には決めました。
※◯…正選 △…次点 ×…逆選 選評方法はこちら
◯<タルタルソース2>
>その日、僕と母さんは空港にいた。
奇妙なリアルさがじわじわと染み入ってくる不思議な魅力があります。
本来なら恐ろしいと感じる出来事をうつくしいと思い込み、そのまま思考を停止している。まるで宗教のよう。タルタルソースの雲をくぐりながら太陽の口に入る中に人がいるエビフライ、飛び散る衣、下の方で泣いたり笑ったりしている人々、そんな宗教画を想像してしまいました。
◯<タルタルソース15>
>少しだけおしゃれ。
最初から最後まで多幸感にあふれているにも関わらず、なぜかものすごくつらいことの裏返しに感じられて、それがとても魅力的でした。
一番食欲を刺激された作品でもあります。
「思わずスマートフォンを手に取ろうとして我に返る。そういうことをしに来たんじゃない。そういうことは似つかわしくない。」ここ凄く好きです。
声に出して読むとたどたどしいというか、つまづく感じがあって、それがちょっと引っかかりました。
△<タルタルソース5>
>混浴だという。
色気と食気の混在、官能的でありながら滑稽でもあるのが面白かったです。
「いや、泡じゃない。
角が立っている。明らかに細切れにした何か。白もややクリーミィ。」
ここいいです。
△<タルタルソース16>
>タルタル島のタルタル人は世界中から愛されている。
凝縮された癒やしにノックアウトです。
最後の「たるっとした笑顔」がダメ押し的で良かった。
×<タルタルソース6>
>開闢の宇宙に、夢を鏤め、
正直よくわからなかったんですけど、よくわからない面白さがありました。
最後の「夕餉の舞いに。」が悩ましかったので逆選にしました。
<タルタルソース7>
>名前だったからタルタルソースと呼んだ。
切なく訴えてくるものがありました。
「衣ばかりのぼくらに絡みついてほしい。」ぐっときました。
<タルタルソース9>
>いきなり言われても
次点にしようか迷いました。
このテーマを見て「いきなり言われても」って言いたくなる気持ち、ピクルスはタルタルソースに必須じゃないけど入れるのも有り、でもピクルスなんて一般家庭にはあまり常備してないんじゃ? 一文でここまで考えさせるって凄いです。
<タルタルソース13>
>キュウリにパプリカ、
一文目と2文目のギャップにときめきました。
ここまでが選評掲示板に書いた選評です。以下は評のみ書いたのですが、全部書いたら自分がどれだからばらすことになることに気づいてお蔵入りさせました。追加でアップしようとも思ったのですが、次の作品募集が始まったので気まずくてあげられないチキンに(なにせ初参加ですし←)
<タルタルソース3>
>これが人生で四度目の恋だった。
「タルタルソース系女子」が刺さりました。
<タルタルソース4>
>雪が嫌いで嫌いも
発想が面白かったです。
<タルタルソース8>
>文明の爛熟期においても、
復活させるという設定、面白かったです。テンポが良くて読んでて楽しいのも魅力的でした。ただどこがタルタルソースなのか読み解けませんでした。
<タルタルソース10>
>『君も仲間にならないか?』
ゆるゆる脱力系。オチも良かったです。
<タルタルソース11>
>「味音痴って楽よ、
最後の一文から最初の一文の意味について考えました。あれ、サスペンス? 現実に起きてるかも?って思わせるリアルな感じにぞわぞわしました。
<タルタルソース12>
>叔母は料理が上手だった。
じわじわと染みいってくるものがありました。
「名前のわからない味の強いもの」この表現好きです。
<タルタルソース14>
>この感覚は、どこかで経験したな。
内容も文章も硬質でかっこいいです。次点と迷いました。 思い出したことを思い出すって回りくどい感じがするんですけど、でもあるのもわかります。
■ 選評結果について ■
自作品への選評結果です。
◯正選1点 △次点4点 ×逆選0点
選評を読んでいると締め方が微妙だったのか、締めるための要素がひとつ足りなかったのか、というところでしょうか。何かひとつ足りないのでは?と言われたら頷く←
あと、他の方の作品や選評を読んでて、短いことが重要な気がしました。500文字はあくまで制限。この結果を踏まえて書いたのがこちらとこちらでした。
1:できるだけ短くすること
2:タイトルにピッタリくる作品にすること
3:独特の読後感
の3つを大事にしたらいいのかな、と。1と2はともかく、3は理屈じゃない部分な気がするので、そこがクリアできるかはタイトルに左右されるのかもしれません、などとつらつら。
それはともかく、選評いただけるのはとても嬉しかったです。ありがとうございました。
あと、超どうでもいいんですけど、番号が投稿順だとしたら、私〆切日に投稿したのに1だったので、みんな当日に投稿したってこと?っていうのがずっと喉に刺さっていたのでここで言っておきます(ホント超どうでもいい
■ 雑感 ■
選評は難しかったですけど作品は面白いし、好きな作品についていろいろ書くのも楽しいし、評をもらえるのが嬉しかったのでまた参加したいです。ちなみに次回の作品募集はすでに始まっています(ので慌ててこの記事を書いています)。
第161回タイトル競作は「テーマは自由」だそうです。とても面白いタイトルで出した人のセンスがすごい。それはともかく、詳しくは投稿方法をご覧ください。
ちなみにこの企画はフォロワーの氷砂糖さんが参加されているのを知って参加させていただきました。ありがとうございました。