超短篇・500文字の心臓、2回目の参加です。今回の競作タイトルは「テーマは自由」。
↑2歳児が「あかちゃんまんしんじゃったの」って見せてくれました
■ 参加作品 ■
ある日目覚めた世界は暗闇で、その暗闇は一生消えないものだった。
光の世界を失った代わりに得たのは音の世界で、そこには失った光に似た何かが広がっていた。どこまでもどこまでも広がっていた。音の世界は自由だった。人間は、生き物は、世界は、こんなにも自由だった。
ぼくのつくる音楽はそれなりにお金になった。お陰で生活に困ることはなかった。自尊心もそれなりに満たされた。
でも、ぼくはからっぽだった。
音の世界は自由だ。どこまでもいけるだろう。でも、ぼくの音が広がれば広がるほど、自由になればなるほど、ぼくはからっぽになった。ぼくはそのからっぽを埋めるためにまた音をつくり、かき鳴らした。どんなに音をつくっても、どんなにうつくしく奏でても、ぼくのからっぽは埋まらないのに。埋まらないどころか肥大したのに。それでもぼくは音を手放さなかった。
だって、ほかにも何もないのだから。
ぼくが知ることは永遠にないけれど、後世、ぼくは盲目ゆえに誰よりも自由な音楽家などと評されたそうだ。皮肉以外の何物でもない。ぼくを苦しめていた自由が、ぼくの音そのものだったというのだから。
■ 選評 ■
今回は10作品と作品数が少なめだったせいか、選評はあまり悩まなかったです。評は悩みましたが。同じような言葉が多発していることについては目をつむってください(急務:語彙力アップ)
◯テーマは自由5
>全てが空振り、のような日曜日。
奥行きがあって、いろいろ想像できる面白い作品だと思いました。
せっかくの休日なのに、「全てが空振り」という、何をやってもうまくいかない感じ。それに対抗するのはあまりにもささやかな「立ち読み」という行為(悪事?)。ふんわりとしたネガティブな最後に「電車に乗って町へ行く」という行動を起こすことで少しポジティブな気持ちで終わるのもいいです。
結果はどうあれ。
全てが空振りだから、立ち読みもできないだろうという気持ちで出かけていったのかも?なんて。でもそれはそれでいいのかも、なんて。
◯テーマは自由1
>わたしの転転転転転(……)
死後の世界を舞台とした、何かの物語の序章を装った(のだと思いました)ところが面白いです。
詩的だけれど物語性もあって、その微妙なラインがとても好きです。読んでいて気持ちが良かったです。
「数えられないものがいくつも見つかった。」という表現が特に素敵。
△テーマは自由10
>真っ白なキャンバスがありました。
ストーリー性とエンタメ性とタイトルに繋げる、というバランスがすごくよい作品だと思いました。
△テーマは自由6
>>おおい、縛ってくれよ。困るんだよ。
縛られれば自由がほしく、自由にされれば縛られたくなり。猫が出てきてからの不思議なリズム感、「別に、愛もない。」、読後感、理屈じゃなくいいなぁって思う作品でした。
×テーマは自由7
>
思わず全選択して文字が存在しないか確認しました。
これ、小説じゃなくても、例えば絵とか写真とかでも真っ白っていう手法は使えちゃうので、小説だからこそできる表現方法としていかがなものかという御託を並べてもみましたが、単純に文字が読みたいので×にしました。
ちなみに行数か文字数には何か意味があったのでしょうか? この空白の量をどう決めたのか興味があります。
※これピッタリ500文字だったみたいです。
テーマは自由4
>「新製品のテーマは『自由』だ」
自由→猫の発想には納得しかありません。オチも笑いました。読んでいて楽しかったです。
テーマは自由2
>つまんない。
子どもがつぶやいてる感じが面白かったです。
子どもにとって自由は常に存在しているものだと思うのですが、言葉にして自由にしていいよ、なんていうとこんな言葉がかえってきそうな気が。
テーマは自由8
>両親から甘やかされて育ち、
アイデアが面白くてコンパクトにまとまった良い作品だと思います。自由のネガティブな面が際立っていて、なんとも言い難い読後感も良かったです。
■ 選評結果 ■
自作品への選評結果です。
◯正選1点 △次点4点 ×逆選1点
前回との違い、逆選1点追加。
今回作品数が少なかったせいか全評書いてくださる方が多くて嬉しかったです。よもぎさん、脳内亭さん、ぴかぴかさん、空虹桜さん、まつじさん、氷砂糖さん、海音寺ジョーさん、ありがとうございました(ここに書く)。
感想じゃなくて評ってところがいいんですよね。良いところ悪いところ、わかりづらかったところ、響いた響かなかった、納得いかなかった、なんでもいいんですけど、読んで感じたことをちゃんとおっしゃっていただけて嬉しいなぁって思います。感想だとどうも悪いとこ書いちゃいけない雰囲気あってそれがツラいときがあるので。
それはともかく、前回もそうなのですが、まずタイトルにフィットするように書くっていうのが大前提にあって(こおりさんにそこ評価されたのは嬉しかった)、それ故に制約がかかってしまっている感があるので、そこをもうちょっとゆるくとらえたほうがいいのかなぁと思っています。あとはもっと物語的でないものを書きたいですね。次回のわたしに期待。
■ 雑感 ■
作品数が少なかったので、前回の参加者さんだったらこのひとが書いたかな?みたいな感じで作者予想をしてみました。この前skype歌会に参加したとき、この短歌は絶対このひとだろう、みたいなのがあったので、小説でもできるよなぁって思って。ひとりでこっそり(笑) 結果は2人だけ◎。それだけ。
そういえば、自作品へも評を書かれている方が2人いらして、あ、これやっていいんだってなったので次回やってみたい気持ちです。自作を客観的にって苦手なので。評は他作品の響かなかったところを書けたらいいんかなぁとは思うけど最終的には好みの問題になるような←
できれば今年1年ぐらいは皆勤目指してがんばれればーと思っている企画なのでまた記事が書けたらいいなぁ(参加=記事を書く、にしたいので)。楽しいです。