SS企画《俺のグルメ》FESTIVALで書いた掌編です。
お題:「これが! 俺の! グルメだ!!」を詰め込んだ、“おいしそう!”な飲食風景
ジャンル:オリジナル、夏祭り、恋愛?
■ 夏祭りのかき氷のおいしさって■
苺味の真っ赤なシロップがかかったかき氷を、プラスチックの小さなスプーンですくっては口の中へ。しゃりっとした次の瞬間には舌の上で溶けて、冷たい液体が喉を潤し、苺味の甘さだけが口内に残る。
正直、かき氷はそんなに好きじゃない。好きじゃないけど、夏、お祭りの屋台で食べるかき氷だけは特別。じっとりとした熱と湿気を吹き飛ばすほどの威力はないけれど、口内を満たす甘味と喉を通る冷たさがたまらなく心地良い。
「かき氷、毎年おいしそうに食べるよね」
「そう?」
「うん、この世の天国って顔してる」
「そうかな?」
「そうだよ」
かき氷を持つ手と反対の手で、さりげなく彼の手を握った。
熱いけど、嫌いじゃない。