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7's Library

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珈琲がテーマのネプリ歌集『珈琲日和6』について(1) 感想

 
だいぶ日が経ってしまいましたが、参加させていただいた珈琲がテーマのネプリ歌集『珈琲日和6』の感想と自作振り返りなどをつらつらとまとめました。思ったより長く書いてしまったので、記事は2〜3回に分けて公開します。

今回は「珈琲日和」の紹介と前半の感想です。

 

■ 「珈琲日和」って? ■

 

「珈琲日和」は珈琲を愛する知己凛様が主宰されてる珈琲がテーマのネプリ歌集です。珈琲に関する短歌、俳句、都々逸、川柳、回文などの一行詩の、6首連作がメインの冊子です(短歌が多めな気がします)。
「珈琲日和6」からはエッセイも掲載され、より読み応えのある一冊に♪
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A5、12ページ。2月19日から約1週間、コンビニのネットプリントで配信されていました。写真はモノクロですがカラーでも可。シンプルなデザインが素敵です♪
ちなみに作品は公募で、ツイッターの知己凛様のアカウントで募集されています。次回は6月中旬〜7月中旬予定とのこと。気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

 

 ■ 『珈琲日和6』の感想(前半) ■

 

● 6首連作「珈琲低空飛行記録」笛地静恵さん
珈琲の種類や海外の作家の名前が出てきてとにかくかっこいい! 私はモカぐらいしか味が想像できなかったのですが、珈琲の種類などから想像されたのだろう世界観がとても素敵です。
特に5首目、大人の雰囲気がかっこよくてまさに酩酊しそう。

古書好きの友に誘われ葉巻バー チェスタートンの黒き酩酊

チェスタートンは読んだことがないのですが、読んでみたいと思った一首。

人生の曲がり角には一杯の黒き珈琲また水鏡

6首目。これまでの5首は、いろんな人の人生の曲がり角で、水鏡に映ったそのシーンを眺めていたのではないかと思ってしまいました。1首としても素敵ですが、連作の締めとしても素晴らしいです。
砂糖もミルクもない、ストレートな大人の珈琲の雰囲気に酔いしれました。


● 6首連作「君の」千束さん
君の舌、君の声、君の眼、君の耳、君の指、君の背……1首ずつに「君」の体の一部がとりあげられている恋の歌。タイトル含め、このような連作があるのが新鮮でした。

珈琲をぬるめにいれる君の舌かわいいことを隠してあげる

1首目。「君」は猫舌さん? 猫みたいでかわいいなぁって思い浮かべながらキスをしたのかしら。「隠してあげる」に「隠していたい」本音がすけて見えそうなエロかわいさにやられました。
やさしく包み込むような雰囲気がミルクとお砂糖をたっぷり入れたぬるめの珈琲のようなのですが、そこはかとなくエロくもあるのできっとウヰスキーあたり仕込まれているのでは?


● エッセイ「ライオンの珈琲」絹更ミハルさん
ケニア珈琲とその珈琲を栽培する国に関するエッセイ。ケニア珈琲はライオンの味とのことですので、ぜひそれを確かめて、ライオンが珈琲豆を食べるところを想像してみたいですw そして珈琲を飲む私たちと、珈琲を作る国の現状に思いを馳せられたらと思います。
この後に掲載されてる6首連作との落差や繋がりも面白かったです。


● 6首連作「Black Coffee」淀美佑子さん
ジャズ・ボーカルの女王と呼ばれるサラ・ヴォーンの「Black Coffee」をモチーフにした連作。サラ・ヴォーンも「Black Coffee」も知らなかったのでぐぐって聴きましたw
「Black Coffee」は悲恋の歌で、それがこの連作の結末でもあるのですが、5〜6首目の流れが好きです。

注がれた熱さにわたしたえきれず愛してしまうきみのドリップ
飲みほせば苦味と孤独たずさえてjazzの通りの女になった

愛してしまった後にくる別れ、歌の通りの展開を、自分自身を嘲笑うようでいて、どこかそれを受け入れているような、大人の女性の歌だなぁと思いました。
サラ・ヴォーンの「Black Coffee」を聴きながら読むとまたイイ。苦いけどスッキリとした後味に爽やかさすら感じられそうです。
あ、関係ないのですが、ブラックコーヒーってミルクも砂糖も入れないものと思っていたのですが、砂糖は入れてもブラックコーヒーなんですね。知らなかったです。

 

● 6首連作「Proust Effect」酒井真帆さん
酒井さんの短歌は上品で艶があるなぁと思うのですが、今回はタイトルからして上品、上品なカッコ良さ……!
珈琲の香りから、学生の頃憧れていた先生のことを思い出す恋の歌。
恩師を思い出し、その恋を思い出し、その頃の自分を思い出してゆく、1首目から3首目までの流れが凄く好きです! が、引用はラスト6首目で。

何らかの呪術のごとく回すミルいつかあなたも灰と化すのに

ここは思い出から現実に返ってきてるのではないかと想像。「呪術」や「灰と化す」という言葉から、なんとなく不穏な空気が漂っているのですが、「灰と化すのに」の後に続くのは、忘れられない、なのかなぁと。思い出しても仕方ないこと、でも忘れられないという、ある意味呪いのような結末に、けれどどこか諦観も感じられて、年月を経たことで過去の自分を冷静に見て、忘れられないまま生きていこうと、そういう自分を受け入れているような気がして、こうやって人は生きていくのだろうと思いました。
豆を挽くところから丁寧に淹れ、素敵な珈琲カップで少しずつ味わいたい、そんな連作でした。


● 6首連作「つづきの話」紫苑さん
恋愛の歌でしょうか。1〜3首目で恋が盛り上がり、4〜6首目で静かに愛に変わっていったような印象を受けました。特に3〜4首目が素敵。

珈琲の肌にながれるぬばたまの夢のあはひにしづむランバダ
ひとりゐる朝の目覚めはしろたへのカップのふちの空白のあり

「ぬばたまの」と「しろたへの」、夢と朝、ランバダ(2人で踊るダンスですねぐぐりました←)とひとり、単語的にも対照的な歌が並ぶことで、夜の情熱的な雰囲気と、朝それが霧散した雰囲気がはっきりと感じられてうつくしいです。
6首すべて言葉のうつくしさが際立っていて、ヨーロッパの高級カフェでゆったりと珈琲を味わっているかのよう。その雰囲気に心地良くのまれていたくなるような作品でした。


● 6首連作「結論:おいしい。」沼谷香澄さん
タイトル通りなら6首全てが珈琲がおいしいと感じたときなのではと読みました。
私は特に2首目がおいしそうでした。

藁があるー太陽と土ー飲みながら南の島へ旅をしている

豆の種類が南の方のものなのか、香りや味が南の島を連想させるのかわかりませんが、珈琲を飲むことで広がる世界観が素晴らしいしおいしそうw
こんな風においしさを表現できるんだってびっくりでした。
他の歌も、「珈琲を波形分解」「解明したい……美味しい」「恋ではなくてカフェイン」など面白い表現が多いなぁと楽しく読みました。
お家でどうやったらより美味しい珈琲になるだろうかと珈琲の淹れ方を研究している気分になりました。

 

● エッセイ「コーヒー幻想」笛地静恵さん
コーヒーを詠んだ短歌を読みほどきつつ、現実ともリンクさせ、その上で幻想も広げる。歌とはどう読むものか楽しむものか味わうものかを考えさせられる、とても素敵で勉強になるエッセイでした。とにかく凄くイイ! この方の別作品も読んでみたい!!


● エッセイ「夢はおおきく」知己凛さん
自分が好きなものを、好きな人に好きになってもらえる幸せ、そこから生まれ広がってゆく素敵な夢。幸せのお裾分けを頂いたような気持ちになるエッセイでした。
最後に掲載されている6首連作とあわせて読むとより幸せオーラが増します!


● 6首連作「君と珈琲と僕」さはらやさん
君と僕の青春を歌った連作。
特に1首目と6首目の繋がりが、僕と君の心情の変化をよりはっきりとあらわしているようで面白いつくりだなぁと思いました。

珈琲が冷めたことにも気付かずに君はスズメを描き続ける
僕を描く君はあまりに真剣で珈琲が冷めるのも忘れた

1首目は僕は蚊帳の外だけれど、6首目は僕だけを見ている君がいる。珈琲はどちらも冷めてしまうけれど、そのときの気持ちは全く違うもので、僕の気持ちが君に届いたのかなぁと微笑ましい気持ちになりました。
砂糖やミルクがうまく混ざらずに、時々苦味や酸味を感じつつ飲み干すような、青春の珈琲。


● 6首連作「SEVEN café」月下桜さん
セブンカフェにまつわる連作。セブンカフェを利用する際のちょっとした人と人との触れ合いが、リアルに、ユーモアたっぷりに詠まれていて、どの歌も凄く好きです。5〜6首目が特に素敵でしたが、引用はあえて別のところから。

ぴーぴーぴー。おいしいコーヒー出来ました 揃ってあける透明カバー

2首目。情景というよりはそのときの感情を想像しておかしくなりました。「揃ってあける」がかわいいです。

あの人は砂糖一つとポーションを二つ垂らしてゆっくりまぜる

3首目。ここだけ読むと「あの人」に恋をしている?とも読めそうですが、たぶんセブンカフェでよく会う人でよく知らないけどコーヒーの好みを覚えてしまったのかなと。人と人との繋がり方の不思議が面白いです。
残念ながら私はセブンカフェを利用したことがないのですが、これを読んで利用してみたいなぁって思いました。
気軽にふらりと立ち寄れるカフェそのもののような連作、別ページに掲載されているエッセイとあわせて読むとよりセブンカフェの世界観が広がって楽しめました!

 

 

ここまでで前半4ページになります。十分いろんな珈琲が味わえましたが後半に続きます。3月中には書き終えたい気持ちです。