下記の企画に参加します。
Twitter300字SSを開催します。第75回のお題は「届く」です。「届ける」、届出、届印、○○届等、「届」の入った言葉でもOKです。「届く」にまつわる光景を作品にして下さい。
— Tw300字ss (@Tw300ss) 2021年5月1日
概要→ https://t.co/PJh41DIrmY
に沿って23時までに #Twitter300字ss と @Tw300ss をつけて投稿して下さい。
ジャンル:オリジナル、現代
暗渠
水のない街に生まれた。
内陸部の、いわゆる新興住宅地。海は遠く川もなく、唯一流れるのはドブ川だけ。汚い水という認識はなんとなくあったけれど、それでも自分の足でいける範囲にあるそのドブ川が特別だった。住宅地や田んぼや空き地をぐねぐねと通って、どこか知らない場所へ伸びていく。この街は、ただ通過する土地のひとつに過ぎないのだ。
今、海も川も近く、春になると田んぼに水が入る土地で暮らしている。風が強い日は、波が堤防に当たる衝撃が響いてくる。
高校生の頃に読んだ、川のある街の小説では、水は連れていくもの、恐ろしいものとして書かれていた。
でも、あの街で私が望んだなにかは、私をここへ、届けてくれたように思うのだ。
※小説は恩田陸の「月の裏側」
(以下画像は本文と同じです)